シリーズ案内
産業FP × 家計の健康診断(全3回予定)
第1回
なぜ「産業FP」か――家計が崩れると、組織が崩れる
産業FPの意義/背景と課題
第2回
職場で使える家計診断:設計思想と仕様
簡略化と妥協しなかった点/導入要件
次回予告
PoCの進め方とUX設計(社内展開の実務)
近日公開:評価指標・運用ワークフロー・FAQ導線
シリーズ第2回は、職場導入を前提に「家計健康診断アプリ」をどう設計したのか——どこを思い切って簡略化し、どこは絶対に妥協しなかったかをまとめます。
なぜ一般のFP相談だけでは不十分なのか
- 来訪者バイアス:相談に来る人だけの声になり、全体像(特に潜在的ハイリスク者)を捉えにくい。
- 記憶依存・主観化:ヒアリングは申告ミスや抜け漏れが起きやすく、定量比較が難しい。
- 時点の断面で終了:一度きりの面談では、家計の変化(給与・物価・イベント)を追えない。
- 心理的ハードル:対面での「恥ずかしさ」「評価される不安」が初動を遅らせる。
だからこそ、誰でも短時間・匿名でも利用でき、同一基準で継続的に評価できる仕組みが必要です。
設計原則(Design Principles)
- 3分入力・即時可視化:入力は最小限(万円/年・比率中心)、結果はその場で。
- 客観指標×明確な閾値:住居費・保険・借入・現金・自己資本などをA/B/Cで採点。
- 将来キャッシュフローを同時算定:初赤字年・赤字幅・安全余命(年)を自動推定。
- 職場導入容易性:ブラウザ完結、スマホ最適化、埋め込み可能(WordPress/CMS)。
- プライバシー先行:匿名モード・ローカル保存を基本、同意なき集計はしない。
- 説明責任:評価根拠・算式を文書化し、誰が見ても再現できる。
あえて簡略化したところ
1) 指標は「10項目」までに限定
判断負荷を下げ、意思決定に直結する項目に絞りました(住居費・借入返済・保険・支出合計・収支・現金・流動資産・カードローン・住宅ローン・自己資本)。
2) 単位は「万円/年」に統一
家計の粒度に合わせ、入力ミスと換算の手間を削減。
3) ライフイベントは「メモ+閾値反映」に最小化
教育・住宅・介護などはメモ/将来費反映に集約し、初回から詰め込み過ぎない設計。
絶対に妥協しなかったところ
1) 採点基準の厳密化
各指標に閾値を固定(例:住居費25/30% 等)。
LLM要約は必ず採点表(per metric)と整合させ、矛盾を許さない。
2) 将来赤字のトリガー検出
初赤字年、赤字幅、現預金で賄える年数(上限「30年以上」)を自動提示。
3) 整合性チェック
表示の数値・文章が食い違う場合は数値を優先し、文面を自動調整。
4) 監査可能性
算式・閾値・丸め規則・出力テンプレートをすべて文書化。更新履歴を管理。
「職場で使える家計診断」をどう実現したか
- 導入の軽さ:既存サイトへ埋め込み(ショートコード/iframe/JS)。
- セキュリティ選択:匿名ローカル保存を既定、組織導入では同意ベースで集計。
- 運用性:FAQ・注意文言・免責を同梱し、HR/総務が説明しやすい状態に。
- モバイル最適化:PC/スマホ双方で3分完了を目標UXに設定。
- アクセシビリティ:フォントサイズ、コントラスト、キーボード操作を配慮。
今後のロードマップ
- スコア分布と推移を可視化する組織ダッシュボード。
- 年齢層・職種別のベンチマークとリスク早期警戒。
- 重大イベント(出産・住宅・介護)前の事前アラート。
- 英語対応など多言語化。
次回予告
次回は、評価アルゴリズムとUIの具体を掘り下げます。
「閾値設計」「赤字年の検出ロジック」「入力ミスを減らすUI」の裏側をお伝えします。


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